※設定としては純一が本校に上がり、音夢が看護学校に行ってから1年の月日がたったということで。 ただ今、春休み中で音夢ちゃんはいつも通り家にいます
〜これは、朝倉家のちょっと早いお花見をリポートしてきた私、ジュンの報告に基ずくSSです〜
「うう〜〜ん・・・」
朝日が部屋中に零れ落ちる時間になって俺は起きた。カーテン越しにくる昇りすぎた朝日(この時間帯で朝日と呼べるだろうか)が寝起きの俺に 目覚まし代わりを言わんばかりの光を当ててくる。どーも狙われている気がするのでまだボーットしながらも しかたなく服を着替えて下に降りる。・・・本当はもう少し寝ていたかったんだが。
コポコポコポコポコポ・・・・
「ん?何だこの音?」
何かをコップに注ぐ音がしたので俺は階段を下りる足を速める。きっと頼子さんだろうか・・・・?
いや、頼子さんはもういないはずだ。だって桜の木が枯れて、もう桜の魔法の効果がなくなったのだから。
じゃあ誰なんだ?そんな疑問を胸に抱きつつ、俺はリビングへの扉を開けた。
そこには・・・・・
「・・・どちら様ですか??」
「兄さん、わかっているならふざけないで下さい」
妹、いや恋人の音夢がそこにいた。さっきの音の正体であるココアを口に含みながら、再放送のドラマでも見ていたんだろう。
「しかし、何でこんな急に帰ってきたんだ?」
いきなり現れたものだからびっくりしている。とりあえず理由を聞いた。
「あれ、言ってませんでしたか?」
「何をだ?」
「昨日から春休みで、今朝こっちに着いたんですよ」
なるほど春休みか、と納得する。カレンダーで確認すると今日は3月29日。もう春休みに入っていてもおかしくはない。
音夢が言うに、先程着いてこっちに向かい、家に着いたものの、インターホンを押しても誰も出ないので合鍵を使って入った。
その後、ココアを作ってわざわざこっちに電話をしてまで俺に撮らせたドラマを見ていたとのこと。
で、見ている途中に起きた俺がこうして降りてきて、今に至った。
「ということか」
「兄さんにしてはよく説明できたほうですかね」
「一言余計だ」
こうしていつもの口喧嘩が始まる。
しかし、なつかしいものだ。1年という長い間にいろんなことがあった。去年の今頃は、音夢が本島の看護学校にいくと言い出し、有無を言わさぬ間で俺は行ってこいと決断を出し、
本校に入学してからは何故か教員免許を持っていたさくらが先生になっていたり、杉並らといろいろ交えて体育祭や文化祭に悪さもしたし。
音夢だって看護学校に渡ってからいろいろ勉強しただろうし、ほんのちょっとだが大人味が増していたり、まああんなトコやこんなトコも大きくなっていたり・・・。
「・・・兄さん」
「・・・・・・」(思い出にふけっている)
「兄さん」
「・・・」(まだふけっている)
「に・い・さ・ん!!」
「うわっっっ」
突然耳元でかなり大きな声が響き渡る。右耳の近くに音夢の顔があった。あまりに近かったので目が合った瞬間、双方顔を赤くして音夢はテーブルのいすに、俺はソファーに寝転んだ。
「ん〜〜、日の光が気持ちいい・・・」
思わず二度寝してしまいそうになった。本島でも風紀委員をやっていたらしい今の音夢の範囲内で眠ってしまうと後々どんなことが起こるかわからない. そう考えると逆に眠気が吹っ飛んだ。
「兄さん、お花見に行きましょう」
突然、音夢が言い出す。
「今からか・・・、桜は咲いてるのか?」
「大丈夫です、さっき見てきました。もう満開でしたよ」
「そうか。じゃ行くか」
「はい、兄さん♪」
そういって着々と準備を進める。
近くの丘に俺らはやってきた。さすが満開だけあって桜の木の下のほうは完全に埋まっている。キョロキョロあたりを見渡すと1ヶ所だけ空いている場所を見つけた。
「あそこにするか、音夢」
「そうですね」
木の下は桜の花びらで下の緑の茂った草が見えなくなっていた。
しかしそんな膨大な桜を散らせながらも俺が真上に見上げる桜の木はどっしりと土の中に根を生やし、枝には太陽の光で燦々と輝くピンクの花びらをちらつかせる。
「・・・きれいだな」
自分でもわからないがさりげなくこんな言葉を発する。きっとこの桜の木に『魔法の桜の木』の姿を照らし合わせたのだろう。
「・・・きれいですね」
隣で俺にもたれる様に座っていた音夢も復唱する。音夢も同じことを考えていたんだろう。
「兄さん・・・」
もたれかかる音夢の重みが増していった。そしてそのままズルズルとマットの上に寝転んでしまう。どうやら寝てしまったようだ。
「全く、自分から行くって言ったのに」 と言いつつ俺もだんだん気持ちよくなってきた。そして同じく俺も木によりかかる体制でそのまま寝てしまう・・・・・。
「う〜〜〜ん、ここは??」
「あれ、兄さんは、って何で私の上に乗っているんですか?」
気が付くと俺は音夢の上に乗りかかるような体制で目を覚ました。この時の俺と音夢の顔の距離は推定1センチ。かなりギリギリのところに音夢の顔があった。
そのため、音夢に跳ね飛ばされ、思いっきりビンタを食らったことは言わないでおこう。
ふと、頭の上にふんわりと、それでいて重量感のあるものが乗っていることに気が付く
「兄さん、何ですかそれ。ぷっあはははは」
「何だ、何がおかし・・・って音夢お前も。あはははは」
突然二人が笑い出す。両方の頭の上には桜の花びらが大量に乗っていて何とも変な格好になっていたからだ。
服にもズボンにもスカートにもあちらこちらに桜の花びらが付いている。
ふと、音夢の鼻頭の一枚花びらが付いていることに気が付く。俺は音夢をびっくりさせる為に慎重に手を伸ばし、
「ほら、ついてるぞ」 と言って花びらをどけてやる。
こんなことに夢中で気が付かなかったが、あたりはもう既に暗くなっている。自分と音夢の服をはらい身支度を整える。
「さて、帰るとするか」
「・・・はい♪」
何故か音夢がものすごく上機嫌だったがそこは言わないでおこう。
こうしてちょっと変わった花見は幕を閉じる。
月夜とこっそり音夢の頭に付けておいた桜の花びらの輝きが同じくらいに見えた。
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