ことり「好きです。ずっと…ずっと朝倉君が好きでした」

学園の屋上での告白。自分の前にいるのは、惹かれていった少年。

突然の告白に驚いているが、すぐに微笑み

純一「悪い。俺、好きな奴がいるんだ」

予想通りの答えに同じように微笑み

ことり「知ってます。知ってました。でも、………それでも、この気持ちを伝えたかったから」

そう言って屋上を後にする。

 純一「ことり」

私の名を呼んでくれる優しい彼。でも

ことり「ダメですよ。フラれた女は潔く去るものなんですから」

その優しい少年に振り返り

ことり「それと……あんまり他の女の子に優しくしないことをオススメします。音夢が焼きもち焼いちゃいますよ?」

純一「そんなに優しくしてるつもりなんてないんだけどな……」

ことり「自覚無し、ですか。……まあ、そこが朝倉君のいいところなんですけどね」

そう言って最後に

 ことり「朝倉君。朝倉君が好きな人のこと、ちゃんと守ってあげてくださいね。」

そう付け加えて、そして

純一「ああ。もちろんだ」

その言葉を聞いて、最高の笑顔を“作り”ました。

 

 

 

 

 

 

 屋上から出て、廊下を歩いているとお姉ちゃんに会いました。

次の授業を受け持つ教室へ向かう姉が

 暦「ことり、どうした?」

ことり「結局、……ダメでした」

暦「そうじゃなくて、あんた授業は?」

ことり「え!?あ……今日は、早退ってことで」

暦「まったく、…今日だけは、大目に見てやろう」

ことり「うん。……ありがと、お姉ちゃん」

姉は私を昇降口まで見送ってくれました。

そして、校門のほうへゆっくり歩いていきます。

 みっくん(以後みく)「こ、ことり!?」

ともちゃん(以後とも)「どうなってるの!?」

私に気付いた生徒たちに振り返ると、みんな窓から驚いた顔を出しています。

一番驚いている親友二人に、笑顔で手を振ります。

それを見て親友二人は

みく「笑ってるね」

とも「うん。ことり、楽しそう」

穏やかな表情で私を見送ってくれます。

ゆっくりと、校門に足を進め、聞こえるはずの無い親友の言葉に感謝しました。

 

 

 

 

 

 

 学園に続く桜並木を歩いてると、

ことり「……ひっく…」

おかしな音と共に、私は立ち止まりました。

それが自分の声だと気付くと、涙腺が緩みだします。

 ことり(泣いちゃだめ!泣いたら止まらなくなっちゃう…)

しかし、堪えれば堪えるほど、涙腺は涙を流すために私を攻め続けます。

本当は泣きたかった。でも、朝倉君の前で泣いたら、彼を困らせてしまう。

 そんなことはできません。

だから、私は我慢しました。フラれたとしても、朝倉君に嫌われたくなかった。けど

 ことり(これじゃあ、以前の私と同じじゃないの?)

その考えが止めになったように、瞳に涙がたまり、涙が視線を濁します。

 涙が流れようとしたその時

 前から歩いてくる一人の少年がいました。

見知った顔です。目が皮肉げにつりあがった顔の口には、火のついたタバコを咥えています。

学園の不良として有名な、昔からの知り合いです。

小学校から同じ学校だった彼は、みんなから怖がられていつも一人でした。

その彼が私に気付いて足を止めます。

真夜「よう。久し振りだなことり。おはよう」

タバコを咥えたまま、手を上げて挨拶します。

 いつも間にか、眼からは涙は無くなっていました。

………一応言っておきますけど、今学園はお昼休みです。完璧に遅刻の彼は朝の挨拶をしてきました。

 

 

 

 

 

 

 なぜか私についてきた彼――柊真夜は、私に缶のオレンジジュースを渡して

真夜「ほれ、確かオレンジジュース好きだったろ」

そう言って自分のコーヒーに口をつけます。

ちなみに、もうタバコは捨てています。多分、私に気を遣ってのことです。

今私たちがいるのは大きな桜の木の下。いつも歌の練習をしている木の下で腰を下ろしています。

ことり「…………」

黙ったままオレンジジュースを開け、口をつけようとしたら

 真夜「で、どうしたんだ?ことりが早退するのは珍しくないけど、頭痛じゃない早退は初めてじゃないか?」

いきなり答えられない質問に、体が止まります。

真夜「……答えたくないんなら、別にいいけどな」

それきり会話がなくなります。

枯れ始めた桜に木からは、たくさんの花びらが舞い落ちます。

それを見つめていたら

 真夜「なにがあった?」

また同じ質問をされます。しかし今度は

ことり「………べつに、なんでもありません」

ぶっきらぼうな口調に、自分でびっくりしました。

そんなつもりは全然なかったのに、これでは彼は気分を悪くしてしまいます。

 ちらっと彼の顔を見ると

彼はこちらを見ていませんでした。

前を見つめながら、彼は続けます。

 真夜「じゃあ当ててやろう。ことり、おまえ朝倉に告白したろう」

ずばり言われては、返す言葉が思いつきません。

しかし彼は続けます。

 真夜「その顔見たら大体分かる。…ま、ショックだわな」

ことり「………私、そんな顔していません」

なぜか反抗的な言葉を返すと、彼はこちらを見て

失礼なことに、ため息をつきました。

そして

真夜「そういうことはな、せめて涙を拭いてからほざくんだな」

 ことり「え……」

顔に触れてみます。確かに、顔は水のようなもので湿っていました。

泣いていたなんて、自分でも気付きませんでした。

ことり「……いつから気付いてました?」

真夜「最初から。俺がジュース買いに行って、帰ってきたら泣いてたもんだから、すげぇびっくりした」

全然そんな素振りを見せなかった彼は、続けます。

真夜「……話たくないなら別にいい。けどな、そんな俺にも隠せないようじゃ、おまえの親友の二人にも簡単にばれるぞ」

黙ったままの私から顔を逸らし、また前をみつめて

真夜「親友に心配させたくないだろう。だから、誰かに不満をぶつけたほうが楽だぞ?それは俺みたいな他人の方がいいと思うから言ってみたんだが……」

 ことり「私、実は人のこころが読めたんです」

その言葉で彼はこちらを見返します。

それから顔を逸らし、今までのことを全て話し続けます。

 彼は真剣でした。

こんな普通の人には信じられない内容の話を真剣に聞いてくれます。

全て話し終わり、聴いていた彼は息を吐きました。

 真夜「なるほどねぇ……そりゃ人の汚ねぇ心なんか読んだら、頭痛もするわな。ことりの謎が解けたぜ」

ことり「はい……すいません」

真夜「はぁ?なんで謝る?」

ことり「だって私、柊君の心も読んでましたから……」

真夜「アホか。ことりが心を読んでたのはその力が勝手にだろう。ことりの意思とは関係無いなら、それはことりのせいじゃない」

そう言いながら、缶コーヒーを地面に置きます。

真夜「それで、涙を我慢していたのも、朝倉のためか……。羨ましいね、朝倉の奴」

ことり「……それもありますけど、せっかく自分が変わろうと思っているのに、泣いてしまってはそれもできないと思いましたから…」

真夜「なるほど……。だが、我慢できなかった」

ことり「…………」

 すると柊君は、いきなり立ち上がり木の後ろ側に回りました。そして

真夜「人間ってのはな、そんな簡単に強くならないんだ。人はあっさり変われない。それこそ、『魔法』でも使わない限りな。だからそんなに急ぐ必要はないんだ。背伸びしても見たい景色は見られない。見たい景色に出会いたいなら自分から動かないとな。歩こうが走ろうが自転車で行こうが、それは人それぞれだ」

その言葉は、やけに重みを感じさせた。彼はさらに続ける。

寂しさを含むその声に、私は耳を傾ける。

真夜「けどな、一瞬ではそこには辿り着けない。自分で動かないと行けないんだ、目的地にはな。自分を変えるなんてのは長い道のりだぞ?だから、今日ぐらいは泣いとけ。それからでもいいだろう。まあ泣きたくないならそれもいいけど。……ああ、泣きたいのなら俺は離れてやるぞ。人に泣き声を聞かれるのは恥ずかしいからな」

 それだけ言って、彼が離れようとしたのが気配で分かった。それを

ことり「待って」

私は引き止めた。彼はそれに従ったようで、また同じように声を出す。

真夜「どうした?」

ことり「ありがとう……なんだか少し楽になった気がします」

真夜「そりゃどうも」

ことり「うん。だからね……目を瞑ってくれますか?」

真夜「ん?あ、ああ」

 そして彼の前まで歩き、その顔を見ます。

素直に目を閉じているその顔は、どことなく可愛げがありました。

その顔から目を逸らし、目線は黒い学生服の胸のボタン。

そして言います。

ことり「……すいません。…胸、貸してください」

 そして彼の制服に飛びつきます。

彼は驚いたようでしたが、少しも後退しないで私を受け止めてくれました。

その胸に顔をうずめて、子供のように泣き続けます。

悲しい。やっぱり悲しい。大丈夫なわけない。大好きな人に好きと言われなかった。

 私の泣き声と、失恋の痛声を全て受け止める彼の体は……

タバコ臭かったけど、男の人の匂いがしました。

 

 

 

 

 

 ことり「すいません……汚してしまいました」

真夜「なに、これくらいなら安いもんだ。不良の俺が人の役に立ったんだからな」

そう言って微笑み、私の涙で濡れた制服を手で擦ります。

そんな彼を見ながら言います。

ことり「柊君は、不良なんかじゃないですよ。昔みたいに優しい柊君でした」

真夜「そうかねぇ…」

遠くを見つめながら呟く柊真夜。

それはもう、昔の自分は遠くの存在というかのように……。

 彼は小学校の頃は普通の子供でした。

誰にでも優しく、みんなに頼りにされるような存在だった。

野球が大好きで、小さい頃から野球をやっていたのです。

才能があったのか、それともすごい努力したのか、彼は付属中学校の一年からレギュラーに選ばれていました。

 しかし、なぜか彼は中学校の二年になる直前、野球部を辞めました。

学園はかなりの騒ぎになりました。

それはそうでしょう、彼はそれだけ野球部の中心的な戦力だったのですから。

彼が入っての最初の大会なんかは、初の全国大会まで進んだくらいだったのです。

 辞めた理由は不明です。

退部届けに書かれた理由は『飽きたから』ということですが、誰もそんなもの信じませんでした。

 しかし誰も追究しようとしませんでした。

 いえ、できませんでした。

それからの柊君は別人のようになってしまったからです。

日に日に目つきは悪くなり、タバコも吸うようになりました。

学園もサボるようになり、遅刻なんかはほぼ毎日でした。

そんな彼をみんな避け、彼は孤立していきました。

 風紀委員と中央委員は既に彼のことは諦めています。

あと少しで付属も終わり、みんな本校に上がっていくでしょう。

彼のような不良生を除いて。

二つの委員会は不良の彼は本校には上がれないと見ていて、柊君とは関わらないようにしています。

それは中央委員の私も同じで……。

そのせいで、柊君のこころはあまり読めなかったけど、こころを覗いたときはこっちが悲しくなるくらい何もありませんでした。

親しい友人とも話せず、なにかに熱中しているわけでもない。勉強なんかは論外だったようです。

 彼は誰とも関わりません。

なぜなら、そうするとその相手に迷惑だからです。

不良の彼に話しかければ、その人も仲間と思われてしまいます。

それを恐れて彼と距離を取っていた自分が恥ずかしく思えてきました。

 けど、……今日は久し振りに、目と目を合わせてお話できました。

やはり柊君は柊君でした。

 もし、彼が昔のままで、私が昔のように仲良くしていたのなら……

私は、彼に惹かれていたかもしれません。

 真夜「それじゃなことり。俺は帰るわ」

そう言って歩き出しました。私の横を通り抜けて。

私は彼に振り返り

ことり「学校はどうするんですか?」

なんて意味の無いことを訊きました。

 それを

真夜「サボる」

とだけ返してくれて、最後に

真夜「ことり、頑張れよ。また泣きたくなったら胸ぐらい貸してやる」

そのまま無言で帰っていきます。

 その背中に向かって

ことり「だいじょうぶっすよ。私は、今から変わります。本当の自分をさらけ出して、嫌われるかもしれない。…けど、私は私に変わりますよ」

左の手を上げて返事をしてくれる柊君。

それを見えなくなるまで見送り、私も家に帰ります。

 ことり(……よしっ!頑張りますよ柊君!)

そうして、私は腕を振り上げて決心します。

その姿こそ、本当の自分だと信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

透明「どうも、透明です。Banさん、HP改装おめでとうございます。遅くながら、お祝いのSSを書かせて頂きました」

真夜「すまんな。この作者の駄文なんかで祝いされて迷惑だろうけど」

透明「おまえは口が悪いな。いいんだよ気持ちが篭ってれば」

真夜「それもそうだな。だけど、なんで俺とことりとの話なんだ?俺はおまえの違うSSの主役のはずだが……」

透明「ああ。それはボツ。なんか気乗りしなくてな……」

真夜「ひでぇなオイ」

透明「で、このSSはアニメ【ダ・カーポ】の二十三話の23話のその後を自分なりに書いた話ですな」

真夜「ことりメインの話だった回のやつか。相変わらずおまえはことり好きーなのな」

透明「やかまし。まあ気が向いたらこの話の続き書こうかなと思うんだが……」

真夜「まあ、おまえは『らぶ』が苦手なんだろ?それに誰も求めていないって」

透明「おまえほんっとに酷いな!」

真夜「それに、もう一つのSSは完結してないのに、もう一個同じBanさんのHPに送るなんて迷惑だろう」

透明「そうだった……実はこの話かなり気に入ったんだが……」

真夜「ほほう。それは以外だな」

透明「ああ。まあ、まだ続き書いてないから、二、三話書いたらBBSでBanさんに訊いてみようか?」

真夜「そうだな。そうしてみろ」

透明「そうする。それではこの辺で。透明でした」

真夜「できれば感想を聞かせてほしいそうだ。まあ遠慮なく叩いてやってくれ」

透明「どうぞお手やらかに……」

 

 

 

 

 


Ban「おお、改正で透明さんが送ってくれましたよ!ありがとうございます」

真一「こいつのよりも上手いな」

Ban「ぐ、ま、まあ、そりゃそうだが……」

真一「そういえばお前ってことり大好きだっけか?」

Ban「そりゃ、神様に匹敵するほど好きだな」

真一「……そうか」

Ban「この話は第23話の間話らしい。それでこんなこと考え付くのはすごいよ」

真一「お前に想像力が無いだけだろ」

Ban「どうせ俺なんてそんなモンさぁぁ〜〜〜!!!(全力疾走)」

真一「……この終わり方が定番なのか!?」

 

 

 

 

 

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